私的考察置き場

主にアニメ、ノベルゲームを中心に私的考察を書き殴ります

考察:『色づく世界の明日から』

 初回の記事は2018年秋に放映されたテレビアニメ、『色づく世界の明日から』© 色づく世界の明日から製作委員会。筆者はamazonで視聴。

 ブログ初心者のため、稚拙な文法、見苦しい点は大目に見ていただきたく思います。

はじめに

 この記事では私的評価、感想、及考察を少し暴走気味に正解、不正解問わずに書き殴ります。そのため盛大に前提が間違っている、論点が行方不明、お前ちゃんと見ていたのか? など不安や不快に感じる部分もあるかもしれません、最初にあやまっておきます。すみません。

 なお、考察記事とういう体で進めますので、もちろん全話視聴が前提です。ネタバレが怖いとかそんな次元じゃなくて、未視聴の方は作品の最も大切な感動を損なう可能性が大いにありますので、是非ともブラウザバック推奨です。それでも記事を読んでから考える? お願いです、先に視聴をして下さい。

〇評価

 各五段階評価です。=1、=0.5です。

 

 ・シナリオ    ・☆★★★

 ・キャラクター  ・☆★★★

 ・音楽      ☆★★★★

 ・作画      ★★★★★

 ・演出     ★★★★★★

 

◇各評価解説

・シナリオ

 青春王道、ガール・ミーツ・ボーイ、友情と恋愛と成長、群像劇、SF要素は添えるだけ。

 はい、率直に言って大好物のジャンルです。なのになぜ評価が低いのか? それはシナリオ単体を俯瞰した時、起伏に乏しく、展開の真新しさや斬新さがない構成がどうしても足を引っ張ってしまうことを考慮したからです。よく言えばシンブル、悪く言えば陳腐。個人的にこういうシナリオは先を読みながら当たりはずれを一喜一憂して楽しむので大好物なんですが、シナリオ単体では作品に引き込むパワーに欠けるのは否定できません。あくまで、シナリオ単体では。

 

・キャラクター 

 ところで、青春王道の恋愛と言えば、女々しい男性主人公がいつの間にかハーレムを築いているもの(偏見)です。成長をテーマに据える際に主人公の欠落や問題を分かりやすい形で描写しようとすると、とんでもない問題児や一種の変態になるか、消極的な性格になってしまうのでしょう。そして、その消極的性格っていうのが曲者で、多くの人が分かりやすく、共感ができる問題であるのは良いんですが、なにせ描かれすぎて飽和状態。その点、この作品の女性主人公が消極的と言うのは上手くて、消極的男性主人公問題を解決に導いています。だって、瞳美がおどおどしてても全然許せます。むしろそんな描写がかわいい。

 脱線しました。まぁ、造形や性格は良いんですが、良くも悪くもアクがない。別の表現なら印象に残りずらいとでも言いますか。青春って言っても部活で全国目指す訳でもないし、魔法で世界を守る訳でもないので、味付けは最低限度に留めているのでしょう。むしろ、この作品は等身大の高校生達による物語であることが重要だったと改めて思います。

 

・音楽

 特筆すべきはオープニングですね。駆け抜ける疾走感と透き通るような歌声。17才といったタイトルもシンプルながら秀逸で、歌詞と相まって作品を形容する一曲になっています。

 

・作画

  これは言わずもがなですね。作中の色彩表現、背景描写は劇場版かと思ってしまうくらいのハイレベル。わずかに作画が崩れた部分があるのを差し引いても余りあるクオリティです。

 

 ・演出

 ★の数がおかしい? いえいえこれは適切な表現です。この作品において演出は中核的役割があって、単体で見ると薄味だったシナリオやキャラクターを盛大に色づけしています。むしろ、テーマから考えても演出面を中心にして構成したかのような作品。演出を通してシナリオ、キャラクターを見て知ることで、それぞれに立体感というか奥行きを持たせる事に成功しています。これをシナリオ、キャラクターに反映させるべきか悩みましたが、演出の評価に統合することとしました。

総評

 「気持ち一つで世界は変わる」この言葉にこの作品は集約されていると言っても過言ではないでしょう。

 この作品は瞳に映る白黒の世界が、色づいた世界に変わるまでを描いた物語と言えます。そこで重要なのが“気持ち一つで”という点。「昨日まで見ていた風景とは違う」「世界が輝いて見えた」言ってしまうのは簡単で、実際にそれを視聴者、或いは読者に押し付けてしまえるのが物語の良いところであり悪いところでもあるわけですが、そう簡単にころころと世界の見え方は変わらないのが現実です。

 やってみたいことがあるけど、やりたくない。知りたいけど、知りたくない。分かってるけど、止められない。そんな矛盾した感情が障害として立ちはだかるわけです。

 こういった、ある意味人間らしい感情をあえてモノローグを多用するでもなく視点の変更や表情の変化などで表現し、それに情景を絡ませることで繊細な心情の揺れが上手く表現されていて、ずっと見入ってしましました。

 そして、こういった心情描写は作中のあちこちに仄めかされていて、キャラの立ち位置、ストーリーの全体像を整理してから見直すと……鳥肌もんですよ。気持ち一つで世界、変わります。

 

〇ここに注目! ~演出~ 

 作中に散りばめられた演出。そこに込められた暗喩的表現について、深読み、解釈違い、無根拠、どれもこれも過分に含んでる可能性が大いに有りますが、気付いたものを紹介していきたいと思います。

 

◇OP

 冒頭の三人のカットは歌詞とのリンクしています。

 ”たとえば~”

 →母親が家を出てしまい、原因は自分にあるのだとして魔法という枷を嵌めた瞳美。

 "誰にも~"

  →自分の絵は誰にも求められていないと、夢を諦めかけていた唯翔。

 "ただまっすぐに~"

 →魔法で人を幸せにするという明確な目標に直走る琥珀。その目標は60年過ぎても失われることはありませんでした。

 “眩しくて~から” 

 →瞳美の心情

 菜の花

 →花言葉は「小さな幸せ」etc... 。作中とマッチしています。

 "サイン――見逃さない"

 →間に映る魔法具とカメラはそれぞれ“未来から過去に送る”"過去から未来に届ける"の対比

 “遠くても~ように”

  →金色のサカナが道と重なっています。作中では金色のサカナが二人を導きました。

  "輝きを~"

 →赤いツツジ花言葉は「恋の喜び」etc...。作中と非常にマッチしています。

 

◇人物の間の遮蔽物

 1話~2話の瞳美と唯翔のシーンなど、4話の屋上での天の川が特に印象的。類似的なものとしては10話の幼い瞳美の絵が該当。心的距離感を演出しています。天の川のシーンは人物の立ち位置から瞳美が未来からきたのことを知っている/知っていないと考えるのがストレートですけれど、なにせ天の川ですので織姫/彦星と考えるとロマンチックですね。変わり種としては未来/過去の人物を暗示しているとも考えられ、その場合、過去の人物は未来には……。

 

 ◇表情

 全般に表情だけで表現するシーンが多いです。印象的なのはやっぱり、あさぎですね。瞳美は代えがたい友人であると同時に、思い人に急接近する要注意人物であり……。複雑な乙女心が頻繁に描写されています。見返してみると3話からなんですね、どれだけ早くからマークしてるんだ……。4話後半の名字で呼ばれた瞳美もお気に入り。

 

◇風

 風が吹く場面が有ります(琥珀による6話後半の風は別枠です)。印象的なのはやっぱり、あさぎが山吹の告白を確信した場面でしょう。心の揺れ動くさまを表現していて、瞳美が唯翔から自発的に絵を見せてもらう場面(2話)、唯翔が瞳美から絵は自分にとって大切なものだと聞いた場面(5話)が対照的で面白いですね。密室で腐りかけていた心に風が吹いたという、一見爽やかでいて重要なシーン。

 

◇陰影

 主にキャラにかかる影。印象的なのは9話、男二人の思案橋のシーン。後ろめたい感情、暗い気持ちなど、ネガティブな感情を表現しています。1話の花火をバックにした瞳美など、頻繁に影がかかっています。瞳美にかかっている影は話が進むほどに少なくなていて、声優さんの演技も相まり、徐々に前向きになっていく印象を与えてくれてます。

 

◇小物

 脇役ですけど、みんないい仕事してます。紙飛行機が良いですね、長崎で紙飛行機っていうのが個人的に刺さりました。紙飛行機の色合いは人物の傘の色と紐づけされていてます。つまり、紙飛行機の行動はその人物の分身とも言えるんですね。魔法の訓練で初めの方に額に当たったのは黄色の飛行機、それは琥珀の傘の色です。あさぎのメッセージ入り紙飛行機は水色。それになにより、ねぇ、11話ですよ。瞳美が紙飛行機を唯翔の家まで飛ばすシーン。これ全部、白色(淡い水色)の紙飛行機なんです。この色は瞳美の色ですからね、自分を何回も思い人に届けようとする……グッときます。

 仕事ぶりではアズライトも負けていません。月白家に伝わる石ですが、調べてみるとパワーストーンということで、色々と効能がありまして……。恋愛、対人運とかドンピシャすぎて唯翔の部屋に落とした(落ちた)のは、なるほどと頷くレベル。

 

◇花

 時間がかかりました。どれくらいかっていうと花屋さんが心底羨ましくなるくらいに。それでも全部は分かりませんでした……。

 OPでも触れましたが、花言葉が使われてそうな箇所がいくつかあります。近しい答えが出たものだけ挙げていきます。基本、色に応じたものを挙げてますが、複数花言葉があるものについては状況に合ったものを筆者基準で選定してますのであしからず。

・1話、13話:未来の瞳美が過去に送られる場所の花

  →不明

・5話:決起集会 山吹とあさぎの間の花

  →リナリア花言葉は「この恋に気付いて」

 最初に瞳美が置いた時から形が二転三転するものだから、意味合いないのかと断念しかけていましたが、最後のカットで特徴的な形がいくつも。調べると納得。そこまでの作画が安定しないのも演出。

・9話:琥珀と瞳美の会話パートに登場する花

 →不明

・10話:幼い瞳美がいた部屋の花

 →白いチューリップ:花言葉は「失われた愛」「新しい愛」etc...

 「失われた愛」はあの空間を体現している言葉です。七色のペンギンの部屋もこの部屋がモチーフのため同じ花がありますが、その場合は「新しい愛」になるのでしょう。

・11話:瞳美が倒れていた側の花

 →コスモス:花言葉は「乙女の純真」etc...

 倒れる直前の独白と掛かっている……?

・13話:瞳美が未来に帰った後、帰路に就く千草が持っている花(正確には種子)

 →ススキ:花言葉は「隠退」

 単純に出番が終わりと言う意味合いなのか、琥珀が彼らを追いかけていることから未来では既に……ということなのか。いや、78~76って、全員は無い、ですよね? 

・13話:墓参り時の供花

 →黄色の菊?:花言葉は「破れた恋」etc...

  白いマーガレット?:花言葉は「こころに秘めた愛」etc...

  紫のスターチス???:花言葉は「上品」「変わらぬ心」「途絶えぬ記憶」etc...

  白いリンドウ??:花言葉は「貞操」「悲しんでいるあなたを愛する」etc...

  ピンクの花:不明

 問題のシーンです。瞳美が花を持って参っていることから、彼女のメッセージとも言える花です。が、何せぼやけた1カットしかないため不明瞭にすぎ、断定しかねるため本当に惜しい限りです(キンセンカとかフランスギクとか知らない)。しかし、独断と偏見が入り混じった花診断ド素人が選定したこのラインナップ。誰に向けた花かは言うまでもなく、さらには貞操とあります。色が見えるようになった彼女が故人を忍んで選んだ色とりどりの花です。きっと、選ぶに至るまでのドラマがあったのでしょう。

 

◇背景と表現 

 深読みできそうなカットの多いこと……(誉め言葉)。印象に残っているのは、やっぱり、あさぎが9話ラストで向かう公園の遊具ですね。あちこちペンキが剥がれていて、錆が見受けられます。時々出ていた公園と比較しても劣化状況があからさますぎます。あさぎが瞳美に向かって思いを漏らしてしまったことを悔いている様子から、意味するところはペンキの剥がれた醜い自分といったところでしょうか。公園の遊具ということからして、子供っぽいとか、大人げない、と言ったキーワードも込められてそうです。

 それに、3話の瞳美が唯翔に礼を言って別れるシーン。間に挟まった水道の蛇口から雫が零れるカット。泣きそうなのをこらえて、無理や笑顔を作ったって暗喩でしょうか。蛇口のカットは他にもありますが、他のシーンは間というかテンポを取るために使われている気がするんですよね……。

 1話と13話の未来のシーンに描写される時計もにくい演出しています。1話が07:31→07:32、13話が07:44→07:45。琥珀登場から抱き合うまでその間13分。13話という意味合いか、それとも13の数字が瞳美(ひとみ)と掛かっていると考えるのも味わい深いですね。

 

◇6話後半について

 深読み深度高めでお送りします。6話の雨の中、瞳美と唯翔が出会って瞳美が色を一時的に取り戻すシーンについてです。物語全体に対する対比がなされています。要するにこのシーン、物語全体の縮図だと思うんですよ。

 

  琥珀の魔法によって傘を吹き飛ばされ、唯翔と対面した

 /琥珀の魔法によって過去に飛ばされ、唯翔と出会った

 暗闇の中へ雨も厭わず逃げる瞳美、それを見て傘を拾って追いかける唯翔

 /過去の出来事から自ら枷を嵌めていた瞳美、それを外す要因である絵を描こうと奮起する唯翔

 列車到着直前に、瞳美がきっかけとなって絵を描くことを決意する唯翔

 /琥珀の時間魔法が発動する間際に、唯翔がきっかけとなって色を取り戻す瞳美

 唯翔が濡れたまま帰路に就く瞳美に傘を差し出し、瞳美は手を伸ばし、二人の手と手が触れる

 /唯翔が未来に帰る瞳美に思いと言葉を手向け、瞳美も思い伝え、二人は抱き合う

 瞳美は路面電車に揺られ、一時的に色彩を取り戻し、窓の外を眺める

 /瞳美はカラビ=ヤウバスに揺られ、色彩を取り戻した目で窓の外を眺める

  

 傘が重要な仕事をしています。唯翔が瞳美を追いかけるシーンにワンカット主役で映り込むキーパーツ。 傘は雨から身を守る、転じて外部から心を守るものです。

 元々の瞳美は故意(本人からすると無意識)に他人と関わりすぎないように振るまっていたのだと思われます。そうして周囲と距離を置くことで、全部魔法が使える自分が悪い、という結論を頑なに守り続け、変化を拒んでいた。そうでなくては大好きだった母親の行動が正当化できないから。過去に飛ばされた瞳美は、そうやって未来で培った価値観や常識、他人と距離を置く術を失います。何も思い通りにならない世界の中で出会ったのが、失ったはずの色が見える絵を描く唯翔でした。

 彼女に渡された傘は、唯翔の思いであり言葉。未来でこの言葉を思い出すことが、彼女にとって新しい生き方の支えとなり心を守るのです。同じ傘でも印象が違うのが面白い。そうやって考えると、唯翔から受け取った傘を差さずに雨に打たれて帰宅するところなんか、この傘があれば雨に打たれても平気、と暗示しているみたいで後日談とリンクしてしまいたくなりますね。

 

〇考察という名の蛇足

 はぐらされて結局正体を明らかにされなかったあれこれ、多分答えはないものだとは思うんですけど、所感を残しておきます。基本、妄想垂れ流しです。

 

◇金色のサカナ

 二人を導く重要ポジションにして謎の存在。6話で触れられはしたものの、その動き回る存在については徹頭徹尾神秘のベールに包まれたままで、挙句の果てにラストのシーンで急浮上……! あと、喋る。そんな謎存在である金色のサカナを考察とは名ばかりの私見を綴ります。

 まずは特徴を

  1. 金色
  2. 幼い唯翔が描き賞を取った絵
  3. 目が動く
  4. 初登場は1話の唯翔の絵。しかし、3話の同じと思われる絵には不在
  5. 絵から飛び出す
  6. 4話ラストで液タブ内部で泳ぐ
  7. 5話にて瞳美の魔法に紛れ込む
  8. 液タブに侵入する
  9. 瞳美は見える
  10. 唯翔も見える
  11. 6話前半、唯翔の絵の中にて瞳美を誘導した
  12. 6話前半、唯翔の絵の中にて腐っていた(大きい方)
  13. 6話前半、唯翔の絵の中にて排水溝のような場所を泳ぎ、ラストで瞳美の前に死んだも同然のような姿で浮上する
  14. 6話後半、唯翔が決意を固めた時に生き返る
  15. 10話、13話、瞳美の心象に唯翔を導く
  16. 13話、喋る「渡れるよ」
  17. 13話、未来でも瞳美に見えている

 

 正体として関連しそうなのは2、3、11、12、13、14、15、16。

 あまりにも漠然としている存在ですので、もう、ざっくりと仮説を立てます。それは金色のサカナが未来の唯翔である、という説です。

 2は言わずもがな唯翔にとって思い出深い絵であることは確か。3については、目の動くタイミングに併せて唯翔の声が重なっています。11、15についてはそうすればうまく行くことを知っていたかのような動きです。12は過去唯翔の心の中に占めるウエイトを示しているものと思われます。13はかつて自分が陥っていた大スランプ、汚染もされるでしょう。14、唯翔が吹っ切れたのとリンクしていることから関連が見られます。16、10話で唯翔が幼い瞳美に向けて送った言葉、関連性があります。

 あと、気になるのは10話後半の瞳美が流した涙。幼い瞳美を唯翔が懸命にはげまそうと絵(モノクロ)を描いていたことが瞳美自身に響いたのかと思っていましたが、シーンの切り替わりが不自然です。唯翔は何も書いて見せようとしたのか……推測ですが、それは金色のサカナ。そしてその涙は未来にも同じやり取りをしたことから流れた涙ではないかと考えます。

 

未来唯翔の行動概要(妄想)をざっくりと

 大学に進み、絵本(七色のペンギン)を執筆。

 ~

 瞳美が生まれ、絵本が瞳美の手に渡る。

 瞳美母が家を出る。唯翔は阻止できなかった。

 ふさぎ込む瞳美へを訪問し、10話と似た会話をし、金色のサカナを描く(色が見えた)。

 唯翔は病気を患っており、死期が近いことを悟る。

 魔法使いに相談

 未来唯翔が瞳美の魔法を解除するために魔法にて瞳美の精神に自身の分身を潜ませ、いつかくるあの時の時間旅行に備える。

 魔法の副作用により、幼い瞳美の中の唯翔との記憶が消える。

 交流が途絶え、唯翔死亡。

 ~

 瞳美が時間両行によって過去に飛び、過去の世界で唯翔の絵を見る→トリガーになって金色のサカナをアバターとし、行動を開始する。

 途切れ途切れの記憶を頼りにして、二人を導く。

 瞳美の色を取り戻すことに成功し、その状態のまま未来に帰る。

 

 推測の域をまるで出ませんが、未来の彼ら(特に唯翔)が直接的に瞳美を助けようとし接触していなかったのが、どうしても引っ掛かるので……。指を加えて見ていた訳ではなく、助けようと誰もが足掻いた結果、瞳美を過去に送ることになった。そう考える方が自然に思えます。 

 

◇唯翔の絵の中にいた人影

 6話前半に出てきてこれっきり、後半の唯翔が決意を新たにした場面でも登場しない、謎の存在。

 特徴をまとめてみます。

  1. 全体像は黒のシルエット
  2. 背丈は高い(少なくとも小学生ではない)
  3. 頭頂部には唯翔と似たアホ毛がある
  4. 網を持って、金色のサカナを捕まえようと狙っている
  5. 現れる場所は唯翔の絵の中にある、色が排水溝のように抜け落ちていく場所
  6. 瞳美の証言を受けた唯翔の反応から、唯翔は人影が何者であるか知っている

 5からして、唯翔の絵に深く関わる人物であることは確かです。3からして唯翔本人、若しくは彼の父親。そこで重要になってきそうなのが4の行為。金色のサカナについては前項で考察しましたが、唯翔の絵の中の存在が狙っていることから、それとは別に唯翔にとっての金色のサカナは何なのかを考える必要が有りそうです。

 唯翔にとっての金色のサカナとは、絵を描きたいと思うきっかけになった重要な事項であり、それ自体を象徴するものです。いわば、インスピレーションの塊。それを捕まえようとしている人影=唯翔と関連づけるのは簡単ですが、それだと6話後半で黒のシルエットが吹き飛んだりするなどして登場しそうなものですが、登場しない。それに、人影の動きですが、どうも実際の唯翔の心情と合致してないように感じるんです。前者がゆっくり、余裕を持って捕まえようと狙っているのに対し、後者はあれでもないこうでもないと模索しながら迷走する焦りが感じられます。これらがどうも引っ掛かります。

 もう一段階踏み込みましょう。唯翔が絵を描きたいと思ったのは、山吹のセリフにある、父親に絵を褒められて嬉しかったことが根幹に因むものと考えられます。その体験の中で特に思い出深いものが賞を取るに至った「金色のサカナ」。つまり、唯翔にとっての"絵を描きたい"と思う衝動は“金色のサカナ”とそれを褒める"父親"の存在がセットになっていると言えなくも無いのです。

 ここで、人影が唯翔の父親であると仮定してみます。

 まず、気になるのは現実における父親の行方。葵家は母子家庭であると母親のセリフにありますが、この発言をする雰囲気を察すると家庭内での父親の不在は割り切れている様子です。離婚、死別、どちらが近しいかと問われれば後者の雰囲気。離婚していた場合なら、その父親に褒められたことが大きな要因となった絵を描き続けることに思春期なりに抵抗を感じていそうなものです。そう言った面で考えても、褒めてくれる存在がいなくなって、絵を描き続ける意義が行方不明になりかけていたと考えられる死別の方が状況に即していると考えられます。

 次に、人影が金色のサカナを捕まえようとしていた行為です。広義的に見て金色のサカナが意味しそうなものは、成功ないし一攫千金でしょう。当初、前項で金色のサカナ=唯翔と考えていたことから、絵描きとして成功しそうな唯翔を虎視眈々と狙う黒い人影=破局的離婚をした悪い父親とか考えていましたが、それが違うのは前述の理由の通りです。では、その行為は何なのか、そこで重要なのが6。唯翔はその”網を持って金色のサカナを捕まえようとする“人影が何者なのか気付いているのです。

 あの絵の世界は唯翔の心象を象徴する世界であり、そこに存在するものは彼の心情ないし思い出を反映した場所です。砂漠は潤いを失くした心、腐敗した巨大な金色のサカナは過去の戻れない思い出、色が濁り抜け落ちる場所は文字通り、唯翔の絵を描く幸せ(色彩)が濁り、失われている場所です。ならば、そこに居る人影がする行為は過去の思い出に因むものではないでしょうか。金色のサカナの絵を前に「まるで生きているようだ!」とか言って、網を構えて捕まえようとする父親。幼い唯翔には特別な思い出になっていても不思議ではありません。それが死別ともなれば尚更にです。

 さらに深読みすると、6話後半で人影が登場しなかった理由。これはそれまでの絵を描く原動力であった父親という存在が、瞳美に切り替わったことを暗に示しているとも考えられ、納得ができます。もしくは尺が無かったとか設定画のコスト。

 以上からして、人影=父親ではないかと私は考察します。……というか唯翔の過去だけでも話ができそうですね。視点が瞳美だから仕方ないから省かれているとはいえ、彼も十分主人公してますので、唯翔視点で語られる話があったらそれはそれで面白そうです。

 

まとめ

 さて、いかがでしたでしょうか? ちゃんと考察記事になっているかどうか懸念が残るところではありますが、最後までこの記事を読んでくだったことに感謝を。そしてこの記事が、あなたの明日をより色づけする一助になれたのであれば幸いです。