私的考察置き場

主にアニメ、ノベルゲームを中心に私的考察を書き殴ります

9-nine- ゆきいろ 感想ないし所感の書置き

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 「9-nine- ゆきいろ ゆきはな ゆきのあと」は9-nine-シリーズの4作目で18禁要素を含む美少女アドベンチャーゲーム。発売はましろ色シンフォニーなどで知られる、ぱれっと

 この記事は9-nine-シリーズ前作、ここいろ、そらいろ、はるいろの内容を含みます。

 

はじめに

 ふわっとしながら、プレイ後の感想や個人的評価、私的考察を書き綴ります。できれば複数回周回してから書きたいところですが、体力的都合を言い訳にして一周のみの記事になります。気になるところは見返したりして補完しますが、細かいミス、思い込みによる誤った誘導、見るに堪えない間違い、などが散見される恐れがあります。生温かい目でお察し下さい。

 なお、プレイ後の感想ですので、ネタバレを過分に含みます。未プレイの方は致命的に感動を損なうおそれがあるので、ブラウザバックをする事を強くお勧めします。

 あと、記事を書くことに慣れていないため、見ずらい、拙い箇所が随所にあるものと思われます。あらかじめご留意ください。 

 

評価

 各5段階評価 =1 =0.5

 

・シナリオ      ☆★★★★

・キャラクター    ★★★★★

・音楽        ☆★★★★

・CG         ★★★★

・テキスト      ★★★★★

 

 

各評価解説

・シナリオ

 超能力、SF、恋愛、日常から始まる非日常の物語。全体の進行を通した感想は「凄く丁寧」。日常と非日常のバランスのとり方やシリアスとギャグの使い分け、各作ラストの引き方など、読み手を飽きさせず、続きを促す工夫が丁寧に凝らされています。設定の公開するタイミングと伏線の張り方、回収の仕方(ここいろとそらいろのナポリタン、そらいろで夢を見ると言った沙月とはるいろでの回収など)、熱い超能力者どうしの心をぶつける戦いなど、非常に読ませられる構成でした。

 ただ、まだ完結ではないことから現段階での所感ですが、シナリオの核といいますか魂と言ってしまいますか、テーマ性、メッセージ性が弱く感じてしまったのが個人的マイナス部分。私的に感じたテーマとしては「罪と罰」なのですが、ここいろの時点である程度表面化していたにも関わらず、置き去りにしてハッピーエンド(発火能力者の死と都の罪悪感)があること、ゆきいろで希亜が過去の経緯から人の死に対して嫌悪し、殺人犯に対しては憎んでいた(自分がそうなることも嫌悪していた)にも関わらず、能力を行使する  (罪を犯す)ことに対するテーマ的回答がパッとしないこと(もっとも黒幕は人間ではなく災害とみなせる部分が大きいし、回答に近いのものは多分"共に背負う"なのだけどそこには後のフォローが欲しいところ)がもやもやする要因。まぁ、テーマが掠っていれば都の問題については次作で触れそうな部分だと思います。希亜についてはシステム的に翔の一人称視点固定が邪魔していた部分もあると思うので、後のフォローを勝手に期待。

 マイナス点も挙げましたが、それを差っ引いてもストーリーの作り込みと見せ方は非常に高水準。尖ったアクや独特の癖が無いため、多くの人に受けとってもらえるような作品となっています。

 

・キャラクター

 ここまで全ヒロインの魅力を引き出し、圧倒された作品は初めてでした。何が凄いって、個別√でちゃんと他のヒロインが存在感を失わずに役割を持っていること。分割製作だからこそのこだわりが随所に光ります。シナリオ重視でも何人かいる内の一人が異彩を放つというのはよくありがちですが、バランス良く引き立てると言う面ではシナリオ面との進行の都合上難しく、大体グランド√のヒロインに注力されてしまいます。バランス良く各ヒロインの魅力を引き出す、つまり個別√で見せ場を作るためには、並行世界的解決方でそれぞれの問題解決に注力するのがベター。しかし、複数の問題があって上手くいかない事が多いのです。第一に各ヒロインの問題を深くしすぎると、ハッピーエンドを迎えても他のヒロインどうなった? となる。それに伴う弊害としてグランド√できれいに締めることが難しくなる。第二、制作上の問題なのでしょうが、個別√を制作する都合上時間との制約からか、複数のライターで同時進行することが多く、設定に齟齬が生じたり、他の担当のキャラとの絡みが極端に少なくなる。この二点が大きく思う事です。けど、この作品は並行世界的に事件を解決しているようで実はそうじゃない。一本のシナリオが確かに息づいている。一本のシナリオで通す場合、ヒロインの個別√は進行途中で枝分かれる手法は多いところですが、そうすると、余りにも順番によって格差がありすぎる。この作品では都が一番不憫な枠に該当しますが……、最後までその魅力(正ヒロインの風格)は褪せていませんでした。なぜか、それは各個別√はシナリオ進行の裏をなぞる形で、三者三様の見せ場があるからではないかと考えます。例えばここいろでは序盤も序盤で、核心に迫る展開より、日常を描くシーンの方に比重が傾いていた。このため日常に絡める形での進行として恋愛要素の相性が良くなる。次にそらいろ、謎に輪郭が浮かび、核心へ手が伸びる段階。序盤から設定の開示、調査、敵との対面そして戦闘と、シナリオが一気に進む状況に、とても顔見知りのヒロインとの馴れ初めから……とはテンポが悪い。そこで見事に嵌ってくれるのが、かの妹。妹だから一緒にいる、妹だから危なくなったら助ける/助けられる。他人じゃなく身内の分、詳細を省いても非常に説得力があります。まぁ、これは幼馴染でも説得力を持たせられますけれど、そうしてしまうと今度は都の立ち位置が危うくなる訳でして……、身内だからできるバランス感覚。だから最後までやるのが強烈に映る。さて、続くはるいろですが、そらいろの流れを受け、敵側にスポットライトが当たります。そこから新たな敵、黒幕の暗躍、戦闘、戦闘……と加速度的な展開。もともとあった主人公の日常シーンは削りに削れ、核心に一気に迫ります。シナリオ展開と日常描写のバランスはそらいろよりシナリオに傾いてます。そらいろは敵が最後まで正体不明であった分、鬱々としたミステリ的要素が強めだったのに対し、はるいろでは敵の立場、正体が描写されているので、少年漫画的な熱いバトル要素が強い。最初からフルスロットルな展開に隠れてしまわないキャラの濃さが求められるため、これまでのキャラ像から振り切れ、勝手に明後日の方向に飛んでいったデスカレー先輩が鮮烈に嵌まる。しかし、いくらデスカレー先輩がイロモノだからといって、恋愛要素を一足跳びに蔑ろにするわけにはいかなかったようで、戦闘終了後からの日常シーンの挿入は少しの失速感を感じるところです(それはそれで非常に面白かったのですが)。最後にゆきいろ、総力戦ということもあって、最初から進行がイレギュラー。高次元的視野を含めた進行であり、開示された要素をフルに使う展開。序盤からシリアス一辺倒な進行のため、ヒロインにはある程度の親和性が欲しいところ。しかし、シリアス面だけでは進行が煮詰まってしまう。そこで強烈に映えるの希亜のギャップですよ。前作までにもクールぶってはいるものの、ポンコツ疑惑は隠せていませんでしたが、素の一面から突然の甘々シーンにはやられてしまう人も多かったはず……!

 キャラの評価解説ですけど、シナリオのことばかり書いているような気がするな……。あと、個人的に推しは都です。あの正妻感が良いんですよねぇ。

 

・音楽

 特筆すべきはそのOP。各作で違い、かつ高水準。それぞれ曲調と言いますか方向性を変えてアプローチしているのも良いと思う点。力強いボーカルは深読み出来そうなムービーと相まって、感情に直接訴えかけてくます。BGMについては特別印象に残るものがありませんでしたが、それぞれの場面に即した内容であったのは確かです。

 

・CG

 やっぱり、エピソード毎に追加されるキャラの新規立絵ですね。分作と言う展開の方法をこう絡めてくるとは意表を突かれました。キャラの見せる表情が追加されるだけでも全く印象がことなってくるし、そのキャラと近くなった、もとい親しくなった気になれる。差分の偉大さを実感しました。

 ただ、戦闘シーンについてはもっとCGが欲しいところでした。与一の槍とか、イーリスの攻撃方法とか、あったらもっと映えそうなのが惜しい。

 

・テキスト

 文章自体に尖った癖がなく、主人公の一人称視点が中心ですが進行のテンポを損なうことがありません。雰囲気というか、明と暗というかアップダウンというか、リズム感すら感じる文章で飽きがやってこない。シナリオ構成だけでは誤魔化せない、非常に“読ませる文章”。キャラのセリフや主人公のモノローグは現代を意識しているのか非常に親近感を感じる内容であり、これが9の立ち位置も相まり、臨場感を演出するのに一役買っているのは確かです。

 

〇総評

 印象を一言でいうなら「凄く丁寧」。全面的に高水準なレベルを保ちながら、細かいフォロー(キャラの心象や小さな伏線など)があって、質が高い。分作で得られる制作時間という利点を多くの面で活かすことに成功している作品です。ジャンルがジャンルだけに万人向け……とはいかないまでも、嗜む多くの方に大手を振って進められる内容であることは確か。

 アニメ化とかしないかなぁ、眷属化のくだりはキスシーンで代用して行為は仄めかせるとかすれば……。9の見せ方? そこは演出の力の見せどころってことで。

 

 

考察的なにか

 すでに色々と考察が飛び交っていると思われるので、恐々としながらも考察をいくつか。続編が期待される中ですので、個人的覚えも兼ねて記載します。

ここいろのキャッチコピー“この世界はキミを「  」した物語だった――。”の「」

 ゆきいろ終了時点で明確な回答が仄めかされていないこの「」。テーマにも重要な意味合いのあると思われるこのキャッチコピーの内容が全く仄めかされないのは気になるところ。次作でゆきいろ以上の急展開があるとは考えにくいですが、ないとは言えない。完結していない以上断定はできませんが、これまでの展開、シナリオから当て嵌りそうなのをいくつか挙げてみます。

 まず、「」内の文字を考える前に、前提を考えます。

 

①この世界

 オーソドックスに捉えるならこの作品世界、主人公である翔の存在する世界です。しかし、これが読者側に投げられたものと考えた場合、読者を取り巻く現実世界を意味します。また、作品世界と一言で言えど、作中で登場する世界は4つあって、1.白巳津川市のある世界、2.ソフィの世界、3.イーリスの世界、4.9の世界。”この“と世界にかかっていることから、作中で一度も訪れていない2、3は除外できる。4については読者=9を素直に受け取るなら現実世界と捉えられるが、あえて分けて考える。そして、ややこしいのが1の世界で、9の介入で多くに枝別れしているので、その枝(世界)とも捉えられてしまう点。これについては後述の内容である程度絞ることができる。

 

②キミ

 定石なら主人公、或いは読者、若しくはヒロイン。サブキャラは除くことができる。9の存在はある種のワイルドカードと機能しています。ないとは思いますが、さらなる急展開で9が登場人物のいずれかとなった場合、展開、落ちを鑑みてまず”キミ“で間違いないでしょう。あとヒロインと一括りにしますが、現状、色々と伏線的余白が多い都が断トツで怪しい。

  

③物語

 9-nine-シリーズを示す……と思わせておいて誰かが行動した軌跡とかを指すかもしれない。

 

④そもそも誰の言葉か

 いや、キャッチコピーだから公式でしょ? ……と先入観を利用したレトリックかも知れない。この場合も主要人物で限られてくる訳ですが、二人称にキミを使う(使いそう)キャラって主人公と先生、都。いっそ主人公⇔都なら分かりやすいんですけどね……。

 

・「」に入る文字

 続いて本題。上項で述べた内容を含め、いくつか考えます。一文字なのはなぜか? ……フィーリングです。

 

◇愛

 ド定番、ストレート、王道。隠す必要ある? とすら思うけれども、すんなり違和感なく入るあたり王道って大事。作品内容的にはるいろのOP、EDに関連しますが、内容的には関連性が薄い。登場人物が愛に飢えてるって意味なら無理やり与一に紐づけできないでもないが……ここいろからの一貫性が薄い。嵌め込むなら、9=主人公、或いは都で、なんやかんやあって数百年後の別世界的なにかから1の世界を救いにきた……みたいな壮大なスペクタクルが欲しいところ。読者に向けて……というには人間関係を重視したり社会性を綿密に描いている訳でもないので、まずないでしょう。

 

◇殺

 インパクト重視。しかし、伏せると衝撃半分、効果激減。作品内容では主人公は精神的に追い込まれ、肉体的にも与一に何度も殺され殺します。主人公=9=読者と考えると”キミ“が全部つながる上、①は作品世界、③は文字通り9-nine-シリーズ、④は公式となり、きれいにまとまってしまいます。いや、きれいにまとまるんですけど味が薄い上、続編の重要性がいまいち欠けてしまうのがどうしても気になるところ。

 

◇探

 響き重視。違う方向にスポットを当てましょう。ゆきいろまでの作品内容での探し物(黒幕、魔眼)は見つかっていますが、探し当ててないものがあったとしたらどうでしょう。逆説的ですが、①を1、②を都(9)、③を軌跡、④を主人公とすると、あたかもまだ明かされていない本当の“都”がいるようじゃありませんか……! なお、②と④を逆にしても特定の枝の主人公を探していたとなれば意味が通ります。加えて、ここいろOPの「ReAliZe」が意味を持つ。この展開は是非とも見てみたいですねぇ。余談ですが、①を作品世界、②を読者(9)、③を9-nine-シリーズ、④を公式としても嵌まる模様。

 

◇壊

 一転して通常路線。作品との関連はOPで9が壊れたり治ったりしていること、主人公の心が壊れた(完全に壊れたのはここいろ、そらいろ)ことから。いや、作品事実に基づきますが、薄味ですね、これ。OPの9=都の心情とするならばまだしも……、けど、ここいろでは戻っている? 「ここから始まる物語」? ループの可能性……! 前言撤回、有りかもしれない。

 

◇騙

 作品内容では主人公(或いは読者)は敵サイドに何度も騙されているともとれなくないですが、実はまだ誰かに騙されているのかもしれない。また、読者=9と思わせておいて実は違うとか、とんでもない騙りがあるのかもしれない。実は主人公は存在しなかったとか、とんでも展開なら歓迎するところですが、収拾がつく気がしないからないだろうな……。

 

 

OPの9の字について

 OPで度々登場する9。OPの最初だったり途中だったり、何かしら意味がありそうなので考察。

 まず、登場部分について。

 

◇ここいろ

 OP冒頭キャッチコピーの後、散り散りになっていた欠片が結合し、9の文字になる

◇そらいろ

 OP冒頭、半分が砕けた状態

 中盤、天の影にかかる

◇はるいろ

 9の字は登場せず。□の中に「nine」の文字

◇ゆきいろ

 OP冒頭、砕けて散り散りになっていく

 

 説を挙げます。この9の字は都の感情とリンクしているのではないか、という説です。九條=9という安易な発想から。

 ここいろ:都は翔と恋人となり、想いを遂げる=9が完全になる

 そらいろ:天と翔の関係性を「仲の良い兄妹」と微笑ましく思ったままフェードアウト=半分が砕けた状態=片思いを継続。また、9の字が天の影にかかっているのは天が翔と関係を持った=都の前に天が立ちはだかる

 はるいろ:春風に嫉妬を見せるもそのままフェードアウト、翔と春風の関係性についての反応は描写なし=片思いのままフェードアウトしたから登場しない?

 ゆきいろ:記憶を読むシーンで、主人公と希亜の関係を知る=9の字が散り散りに砕けていく=想いが砕ける

 

 どうでしょう、はるいろOPがなにせ苦しいので、線としては薄いですが当たらずとも遠からずと思いたいところです。大方、登場人物としての"9"を意味するのでしょうが、別の方向性を考えて見ました。

 

都について

 第一作、ここいろのヒロインであり、正ヒロイン枠。ゆきいろ最後では次作でスポットライトが当たることが仄めかされる人物。そんな都の伏線としての余白部分を探ってみます。

 

◇OP「ReAliZe」

 ここいろOP。意味は調べると「気づく、理解する」。素直に聞く限りだと秘めた思いに気付いて欲しいという都の感情や取り巻く状況にリンクするんですが、怪しい歌詞がいくつかあるんですよ。2番とか1番と打って変わって、明らかに、ここいろの内容を踏襲していませんし。

 気になる部分として、"神様の導く言葉響く全てはここから""途絶えた/壊れた 夢/記憶"“裁かれし時切なさ押し寄せてくる”タイトルが大文字と小文字が混在している。何よりそのタイトル名、もう他の意味を隠しているようしか見えないし、挑戦状的な意図すら感じる始末。少し考察します。

 "神様の導く言葉響く全てはここから"

 直に受け取るなら、”アーティファクトの声を聞いた時から始まった”となりますが、作中で神様といえば白蛇様=ソフィ=イーリス。もし、彼女達のいずれかから声を聞いて始まった物語だとしたら、まるで意味(物語の開始点)が異なってきます。

 "途絶えた/壊れた 夢/記憶"

 ここいろでは一回バッドエンドを経験します。が、主人公視点で作中人物の記憶は壊れていませんし、途絶えてもいません。他に途絶えた記憶を抱えた誰かがいたのではないか? そう邪推するわけです。あと蛇足気味ですが、途絶えた夢と壊れた記憶は希亜と天に対応していたりも。

 “裁かれし時切なさ押し寄せてくる”

 作中で裁かれる=罰を受けるようなことといえば、バッドエンドはそれらしいですが、ハッピーエンドでは罰を受ける場面はありません。気付いてない潜在的罪(発火能力者の末路)に対して、いつか罰を追う……かもしれませんが、続く切なさ押し寄せてくる、には繋げにくい。ゆきいろまででの「裁き」で連想するのは希亜の能力ですが、ここいろでは発動する描写すらない。これも、いつか裁き(罰)を受けることを自覚しながら何かを実行している、何者かがいるのではないかと思う訳なんですよ。

・タイトルの大文字小文字

 商標の都合で差別化した? いやいや、そうやって先入観を利用したレトリックかもしれない。

 ありそうなのは、分解して考えることですが、Re AliZe と分けても後部が固有名詞でしかヒットしない。「アリゼ」さんは出てこないからまず違う。大文字だけ、小文字だけで読む。RAZ elie  調べると前部は国名の「イラン」、後部は人名で「エリー」。イラン出身のエリーさん、誰だ……。いや、elieの読みには「イーリ」とも、これはまさかイーリスの愛称か? ……こじつけが過ぎるか。イーリスはギリシャ神話(iris)からとってると推測できるから綴り的にも違う、エリス(eris)の方が設定的には正しい気がするけど、これも違う。では、特定の単語を読ませるため。怪しいのはA-Zの間のli(嘘)……あ!! AからZ! 最初から最後の間の嘘!! 待て待て、liだけではリチウム、歩兵隊のままだから、余っているeを足してlieにする必要が有る。だから意味合いは不完全な嘘、終わること(Zを越えること)で完成する嘘。そして前にはRe「繰り返す、再び」だから、元々の単語の意味を足すと考えられるのは2つ。

1.繰り返す、始まりと終わりの間の嘘に気づいて。

2.繰り返す、この夢(嘘)が覚める(終わる)前に気づいて。

1なら、気づいてほしい嘘だから不完全とするか、そもそもが歪な嘘とすべきか。そもそも嘘とは何か?

2は夢が覚めることでその夢は夢のまま嘘となる? 誰が夢を見ている? 何に気づいて欲しい?

圧倒的にピースが足りてないですねぇ。

ここで余談を少々。アルファベットの9番目の文字はi「愛」です。ここいろは愛というか恋だと思うので除外……したいけど、分からないですね。

 

◇都=9説

 これです。なぜ前項でこの説が自然に出てくるのか、考察します。

 まず、都の伏線部分について。

  1. “九“條
  2. ここいろ一周目における、石化までの行動の空白
  3. ソフィ曰く「心が脆い」
  4. コロナグループ
  5. ここいろのハッピーエンド

1.“九“條

 九の字がついた名字は白巳津川市では由緒正しい。九十九神社と同じように古来より何かを伝えている可能性がある。メタ的視点だと、タイトルと同じ意味を持つ字を嵌め込んでおいて何もない訳がない。……という、先入観を利用したレトリックかもしれない。

2.ここいろ一周目における、石化までの行動の空白

 5月1日に翔と別れてからの行動の空白。明らかにされていない分、何が起きていてもおかしくない。例えば、記憶を読む過程でオーバーロードの所在に気づくとか。それに、よくよく考えると石化してしまうのは妙なところがある。記憶を読んで与一が犯人だと判明するのは順当だけど、わざわざ人気のない夜の神社で「みつけて」対峙している。与一が人気を気にするのは分かったはずだし、探さなくても学校で話せば事足りる上、アーティファクトの形状も分かったはずだから先に奪えばいい。いや、あの都だったら、アーティファクトを奪うことには躊躇するか……。それでも、連続殺人犯に対して余りにも不用心な行動であることは確か。絶対的な自信があったのではないか。

 関連して、一周目の終了はゆきいろまでのバッドエンドとは違い、選択肢なしでタイトルに戻る。都の死=強制的なやり直しが発生、と考えるか。一周目は他の枝にはない独自性が与えられていると考えられる。そもそも、この演出がゆきいろ最後で示された剪定されてない状態を表すと考えるのが妥当か。

3.ソフィ曰く「心が脆い」

 何度か言われています。一周目における行動を観測した結果……にしては日付がおかしい。都が暴走する日以前に言われている場面があったはず。だから、ソフィは別の枝の都の行動を観測して断じているのではなく、その都度判断している。一周目のフォローにしては回数が多く、一周目の独自性を上げるとともに「心が壊れた」状態の再来を示唆しています。

4.コロナグループ

 描写が少ない。いや、ナインボールとかの設定とか、都の性格とか、メビウスリンクとのパイプとか、働きはしているけど、まだ何かある気がしてならない。コロナ=王冠がどうしても気になる。

5.ここいろのハッピーエンド

 バッドエンドで問題点を提示して起きながら、知らぬが仏を地で行く終わり方。ハッピーというよりベターと呼ぶべきエンド。つまり、都のハッピーエンドは他にある!!

 

 次に、9とは

  1. ソフィ、イーリス曰く遠い世界にいる
  2. オーバーロードのユーザー
  3. 顔、声、性別は一切不明
  4. 選択肢は9の意思
  5. 9と翔は同調可能
  6. ソフィの命名で白巳津川市の事件に絡む9人目の能力者から

 いや、これは読者(プレイヤー)に臨場感を持って物語を体験してもらうための演出でしょ? と思わせた先入観を利(省略)。

 上項の通り、9の素性は明らかにされてません。そして、オーバーロードの形状についても同様です。つまり、最大の伏線であるこの9の正体については物語のお約束上、既に登場している人物である可能性が非常に高く、そうすると色々とおいしくなる。

 各項について考察していきましょう。

1.ソフィ、イーリス曰く遠い世界にいる

 既に大きく枝分かれしてしまった世界。例えばソフィとイーリス。ある選択が大きな枝を産み、ほぼ別世界となったケースがある。可能性としてはオーバーロードの所有者になったことで枝別れした、などが考えられる。或いは、まだ確定していない今後発生する予定の枝からとか。

2.オーバーロードのユーザー

 オーバーロードについてですが怪しい部分が多い。まず、形状がそもそも不明である事。次に、意味は「過負荷」何に対してのかは明確にされていませんが、枝の乱立を避けるソフィの発言を鑑みて対象は世界と考えられます。そして、ソフィ、イーリス曰く御伽噺上のもの。千年前のアーティファクト流出はそれが実用の黎明期であったため起きた(故意な)事故。そして、そのアーティファクトを回収したのは紛れもなくソフィ/イーリス。これがおかしい。なぜ、アーティファクトの黎明期の生き証人であるソフィ/イーリスですら御伽噺上の代物なのか? ソフィが御伽噺とはぐらかすなら分かるがイーリスも同じ御伽噺上のものだったと口にしている。まだ明かされてない部分が有る。あと分かっているのは”世界を統べる王になれる能力“だということ。

 以上を踏まえ推測をします。まず、王と言う部分に着目すると、王=王冠=コロナ=コロナグループと連想を繋げられます。つまり、オーバーロードの形状は王冠で、コロナグループはその能力を持って財を成したことに由来する。よって都に縁があり適正がある。……飛躍しすぎでしょうか。オーバーロード自体がソフィの世界に存在していなかったかもしれないことを考えると、オリジナルがどこにあっても違和感は無いし、世界の眼と同じように代々オーバーロードを継承してきた家系と考えるのは荒唐無稽とまではいかないはず。

3.顔、声、性別は一切不明

 意図的とまでとはいえませんが、何度も反応が希薄だとか、はっきり分からない旨を返されています。裏を返せば、なにかに激しく動揺していても気づかれていない。そして正体不明。

4.選択肢は9の意思

 無個性な選択肢が多い。つまり、誰が9であっても分からない。あと、選択肢が増えたのはどこからか、ここいろのバッドエンドが終わってからです。あれは通らなければいけない枝だったのかも知れません。

5.9と翔は同調可能

 同調する条件は世界の眼を有している同位存在……でしたが、ゆきいろでは抜け道として眷属化の応用で世界の眼の因子を受け継ぐなら、繋ぐことが可能となっています。逆説的に、因子を受け継いでいるなら大本にも繋ぐことができる=観測可能=オーバーロード使用可能だと言えます。つまり、世界の眼を有した翔と関係をもったオーバーロード所持者は翔に繋ぐことが可能ということになる。よって9が翔の同位存在であるとは限らない、これは大きなポイント。

6.ソフィの命名で白水津市の事件に絡む9人目の能力者から

 9人目の能力者(ユーザー)と言う触れ込みですが、よくよく考えて見ると蓮夜は眷属化こそしていたとはいえ、はるいろ終了時点ではソフィ視点でもユーザーではない事になっている。まさか、全て見越した上で”九“條から9をとっている? 別世界の翔で同位存在であるとか言ってたのはわざと? この線は薄そうですね……。

 

 以上が、都=9と考えられそうな理由です。目的、動機はピースが欠如しているので不透明。  

 

伏線落書き
  • 白蛇様(はくだ・しろへび)の読みが違う理由
  • 輪廻転生のメビウスリングの輪廻転生→ループする?
  • コロナグループ
  • 九條の「九」
  • オーバーロードについて
  • 9の正体
  • ここいろ4月30日の与一
  • 二人目の石化犠牲者
  • ソフィーの暦が悪い(言い訳かもしれないけど期待)
  • ここいろメインビジュアルの桜とイチョウ→4月と9月(銀杏の収穫時期葉が黄色くなるのは11月のようですが……)次作は月がずれる?
  • 物語開始時の地震→もし、なんらかの意図で故意に起こされたのなら、急展開

 

次作予想

 現在執筆中に絶賛カウントダウンが進んでいますので、まず次回作発表であると睨んでいます。では、これまでの考察を踏まえ、勝手に妄想を膨らませて予想してみましょう。

 

 9-nine- ここいろ、ここから、ここまでの

 

 ソフィと9はイーリスを滅ぼすことに成功し、剪定できなかった不幸がおきた枝である最初の枝。都が石化してしまった枝を修正するため、最後の活動を開始する。

 しかし、そこでは元々イーリスが接触を断っていたためか、与一は魔眼の力を以前同様に使用していた。 

 剪定できなかった枝は残り続ける。よって、与一と都が対峙するその時に翔を立ち会わせることによって剪定、あるいは改変を試みた。しかし、与一と都が対峙した現場で都が石化することはなく、与一はアーティファクトを奪われ、一方的に無力化されている。なぜか、都は記憶を盗む過程で両親をはじめ親類の記憶を掌握し、九條家に伝わる家宝である王冠――オーバーロード――を知り、伝承をもとに契約を済ませていたのである。一見平穏に幕を閉じた人体石化事件。しかし、罪を過剰に意識する都はこの力をもっと活かし、多くの人を救うことを試み始める。三人目のオーバーロードの持ち主の登場による枝の乱立と混迷。ソフィーの協力を経て明かされる9の正体と目的。そして、9は語る「やっとここまでこれた。お願い、“私”を止めて――」

 彼女の夢が終わるその前に、これまで歩んできた相棒へ、告げる言葉と感情は。

 全てが終わった後、翔はオーバーロードを直接契約し、“あの日”に舞い戻る。

 

 この世界はキミを「探」した物語だった――

 

 

 勢いで書きましたが、無理やり感が否めないですね。突っ込まれたら何も返せなさそう……。そもそも、考察したものが活きてないっていうか。大体、イーリスが消滅した後の世界がどうなっているのかが良く分らない。因果関係がぐちゃぐちゃになるから、その地点毎で分岐するのが分かりやすいけれど、それって、枝が無数に増えるってことじゃ……。

 

 

 まとめ

 9-nine-シリーズは途中参加な私ですが、最初から追いかけていればと少し後悔しています。この先の見えない展開を考察する楽しみはなんとも言えないですからね……。続く作品は果たして続編なのか、FDめいた何かなのか、非常に楽しみながら待つとしましょう。

 さて、長々と考察めいた妄想などを垂れ流しましたが、ここまでスクロールしていただき、ありがとうございます。

 最後に、この作品の製作に携わる方々へ感謝を。次作、期待して待ってます!

考察:『色づく世界の明日から』

 初回の記事は2018年秋に放映されたテレビアニメ、『色づく世界の明日から』© 色づく世界の明日から製作委員会。筆者はamazonで視聴。

 ブログ初心者のため、稚拙な文法、見苦しい点は大目に見ていただきたく思います。

はじめに

 この記事では私的評価、感想、及考察を少し暴走気味に正解、不正解問わずに書き殴ります。そのため盛大に前提が間違っている、論点が行方不明、お前ちゃんと見ていたのか? など不安や不快に感じる部分もあるかもしれません、最初にあやまっておきます。すみません。

 なお、考察記事とういう体で進めますので、もちろん全話視聴が前提です。ネタバレが怖いとかそんな次元じゃなくて、未視聴の方は作品の最も大切な感動を損なう可能性が大いにありますので、是非ともブラウザバック推奨です。それでも記事を読んでから考える? お願いです、先に視聴をして下さい。

〇評価

 各五段階評価です。=1、=0.5です。

 

 ・シナリオ    ・☆★★★

 ・キャラクター  ・☆★★★

 ・音楽      ☆★★★★

 ・作画      ★★★★★

 ・演出     ★★★★★★

 

◇各評価解説

・シナリオ

 青春王道、ガール・ミーツ・ボーイ、友情と恋愛と成長、群像劇、SF要素は添えるだけ。

 はい、率直に言って大好物のジャンルです。なのになぜ評価が低いのか? それはシナリオ単体を俯瞰した時、起伏に乏しく、展開の真新しさや斬新さがない構成がどうしても足を引っ張ってしまうことを考慮したからです。よく言えばシンブル、悪く言えば陳腐。個人的にこういうシナリオは先を読みながら当たりはずれを一喜一憂して楽しむので大好物なんですが、シナリオ単体では作品に引き込むパワーに欠けるのは否定できません。あくまで、シナリオ単体では。

 

・キャラクター 

 ところで、青春王道の恋愛と言えば、女々しい男性主人公がいつの間にかハーレムを築いているもの(偏見)です。成長をテーマに据える際に主人公の欠落や問題を分かりやすい形で描写しようとすると、とんでもない問題児や一種の変態になるか、消極的な性格になってしまうのでしょう。そして、その消極的性格っていうのが曲者で、多くの人が分かりやすく、共感ができる問題であるのは良いんですが、なにせ描かれすぎて飽和状態。その点、この作品の女性主人公が消極的と言うのは上手くて、消極的男性主人公問題を解決に導いています。だって、瞳美がおどおどしてても全然許せます。むしろそんな描写がかわいい。

 脱線しました。まぁ、造形や性格は良いんですが、良くも悪くもアクがない。別の表現なら印象に残りずらいとでも言いますか。青春って言っても部活で全国目指す訳でもないし、魔法で世界を守る訳でもないので、味付けは最低限度に留めているのでしょう。むしろ、この作品は等身大の高校生達による物語であることが重要だったと改めて思います。

 

・音楽

 特筆すべきはオープニングですね。駆け抜ける疾走感と透き通るような歌声。17才といったタイトルもシンプルながら秀逸で、歌詞と相まって作品を形容する一曲になっています。

 

・作画

  これは言わずもがなですね。作中の色彩表現、背景描写は劇場版かと思ってしまうくらいのハイレベル。わずかに作画が崩れた部分があるのを差し引いても余りあるクオリティです。

 

 ・演出

 ★の数がおかしい? いえいえこれは適切な表現です。この作品において演出は中核的役割があって、単体で見ると薄味だったシナリオやキャラクターを盛大に色づけしています。むしろ、テーマから考えても演出面を中心にして構成したかのような作品。演出を通してシナリオ、キャラクターを見て知ることで、それぞれに立体感というか奥行きを持たせる事に成功しています。これをシナリオ、キャラクターに反映させるべきか悩みましたが、演出の評価に統合することとしました。

総評

 「気持ち一つで世界は変わる」この言葉にこの作品は集約されていると言っても過言ではないでしょう。

 この作品は瞳に映る白黒の世界が、色づいた世界に変わるまでを描いた物語と言えます。そこで重要なのが“気持ち一つで”という点。「昨日まで見ていた風景とは違う」「世界が輝いて見えた」言ってしまうのは簡単で、実際にそれを視聴者、或いは読者に押し付けてしまえるのが物語の良いところであり悪いところでもあるわけですが、そう簡単にころころと世界の見え方は変わらないのが現実です。

 やってみたいことがあるけど、やりたくない。知りたいけど、知りたくない。分かってるけど、止められない。そんな矛盾した感情が障害として立ちはだかるわけです。

 こういった、ある意味人間らしい感情をあえてモノローグを多用するでもなく視点の変更や表情の変化などで表現し、それに情景を絡ませることで繊細な心情の揺れが上手く表現されていて、ずっと見入ってしましました。

 そして、こういった心情描写は作中のあちこちに仄めかされていて、キャラの立ち位置、ストーリーの全体像を整理してから見直すと……鳥肌もんですよ。気持ち一つで世界、変わります。

 

〇ここに注目! ~演出~ 

 作中に散りばめられた演出。そこに込められた暗喩的表現について、深読み、解釈違い、無根拠、どれもこれも過分に含んでる可能性が大いに有りますが、気付いたものを紹介していきたいと思います。

 

◇OP

 冒頭の三人のカットは歌詞とのリンクしています。

 ”たとえば~”

 →母親が家を出てしまい、原因は自分にあるのだとして魔法という枷を嵌めた瞳美。

 "誰にも~"

  →自分の絵は誰にも求められていないと、夢を諦めかけていた唯翔。

 "ただまっすぐに~"

 →魔法で人を幸せにするという明確な目標に直走る琥珀。その目標は60年過ぎても失われることはありませんでした。

 “眩しくて~から” 

 →瞳美の心情

 菜の花

 →花言葉は「小さな幸せ」etc... 。作中とマッチしています。

 "サイン――見逃さない"

 →間に映る魔法具とカメラはそれぞれ“未来から過去に送る”"過去から未来に届ける"の対比

 “遠くても~ように”

  →金色のサカナが道と重なっています。作中では金色のサカナが二人を導きました。

  "輝きを~"

 →赤いツツジ花言葉は「恋の喜び」etc...。作中と非常にマッチしています。

 

◇人物の間の遮蔽物

 1話~2話の瞳美と唯翔のシーンなど、4話の屋上での天の川が特に印象的。類似的なものとしては10話の幼い瞳美の絵が該当。心的距離感を演出しています。天の川のシーンは人物の立ち位置から瞳美が未来からきたのことを知っている/知っていないと考えるのがストレートですけれど、なにせ天の川ですので織姫/彦星と考えるとロマンチックですね。変わり種としては未来/過去の人物を暗示しているとも考えられ、その場合、過去の人物は未来には……。

 

 ◇表情

 全般に表情だけで表現するシーンが多いです。印象的なのはやっぱり、あさぎですね。瞳美は代えがたい友人であると同時に、思い人に急接近する要注意人物であり……。複雑な乙女心が頻繁に描写されています。見返してみると3話からなんですね、どれだけ早くからマークしてるんだ……。4話後半の名字で呼ばれた瞳美もお気に入り。

 

◇風

 風が吹く場面が有ります(琥珀による6話後半の風は別枠です)。印象的なのはやっぱり、あさぎが山吹の告白を確信した場面でしょう。心の揺れ動くさまを表現していて、瞳美が唯翔から自発的に絵を見せてもらう場面(2話)、唯翔が瞳美から絵は自分にとって大切なものだと聞いた場面(5話)が対照的で面白いですね。密室で腐りかけていた心に風が吹いたという、一見爽やかでいて重要なシーン。

 

◇陰影

 主にキャラにかかる影。印象的なのは9話、男二人の思案橋のシーン。後ろめたい感情、暗い気持ちなど、ネガティブな感情を表現しています。1話の花火をバックにした瞳美など、頻繁に影がかかっています。瞳美にかかっている影は話が進むほどに少なくなていて、声優さんの演技も相まり、徐々に前向きになっていく印象を与えてくれてます。

 

◇小物

 脇役ですけど、みんないい仕事してます。紙飛行機が良いですね、長崎で紙飛行機っていうのが個人的に刺さりました。紙飛行機の色合いは人物の傘の色と紐づけされていてます。つまり、紙飛行機の行動はその人物の分身とも言えるんですね。魔法の訓練で初めの方に額に当たったのは黄色の飛行機、それは琥珀の傘の色です。あさぎのメッセージ入り紙飛行機は水色。それになにより、ねぇ、11話ですよ。瞳美が紙飛行機を唯翔の家まで飛ばすシーン。これ全部、白色(淡い水色)の紙飛行機なんです。この色は瞳美の色ですからね、自分を何回も思い人に届けようとする……グッときます。

 仕事ぶりではアズライトも負けていません。月白家に伝わる石ですが、調べてみるとパワーストーンということで、色々と効能がありまして……。恋愛、対人運とかドンピシャすぎて唯翔の部屋に落とした(落ちた)のは、なるほどと頷くレベル。

 

◇花

 時間がかかりました。どれくらいかっていうと花屋さんが心底羨ましくなるくらいに。それでも全部は分かりませんでした……。

 OPでも触れましたが、花言葉が使われてそうな箇所がいくつかあります。近しい答えが出たものだけ挙げていきます。基本、色に応じたものを挙げてますが、複数花言葉があるものについては状況に合ったものを筆者基準で選定してますのであしからず。

・1話、13話:未来の瞳美が過去に送られる場所の花

  →不明

・5話:決起集会 山吹とあさぎの間の花

  →リナリア花言葉は「この恋に気付いて」

 最初に瞳美が置いた時から形が二転三転するものだから、意味合いないのかと断念しかけていましたが、最後のカットで特徴的な形がいくつも。調べると納得。そこまでの作画が安定しないのも演出。

・9話:琥珀と瞳美の会話パートに登場する花

 →不明

・10話:幼い瞳美がいた部屋の花

 →白いチューリップ:花言葉は「失われた愛」「新しい愛」etc...

 「失われた愛」はあの空間を体現している言葉です。七色のペンギンの部屋もこの部屋がモチーフのため同じ花がありますが、その場合は「新しい愛」になるのでしょう。

・11話:瞳美が倒れていた側の花

 →コスモス:花言葉は「乙女の純真」etc...

 倒れる直前の独白と掛かっている……?

・13話:瞳美が未来に帰った後、帰路に就く千草が持っている花(正確には種子)

 →ススキ:花言葉は「隠退」

 単純に出番が終わりと言う意味合いなのか、琥珀が彼らを追いかけていることから未来では既に……ということなのか。いや、78~76って、全員は無い、ですよね? 

・13話:墓参り時の供花

 →黄色の菊?:花言葉は「破れた恋」etc...

  白いマーガレット?:花言葉は「こころに秘めた愛」etc...

  紫のスターチス???:花言葉は「上品」「変わらぬ心」「途絶えぬ記憶」etc...

  白いリンドウ??:花言葉は「貞操」「悲しんでいるあなたを愛する」etc...

  ピンクの花:不明

 問題のシーンです。瞳美が花を持って参っていることから、彼女のメッセージとも言える花です。が、何せぼやけた1カットしかないため不明瞭にすぎ、断定しかねるため本当に惜しい限りです(キンセンカとかフランスギクとか知らない)。しかし、独断と偏見が入り混じった花診断ド素人が選定したこのラインナップ。誰に向けた花かは言うまでもなく、さらには貞操とあります。色が見えるようになった彼女が故人を忍んで選んだ色とりどりの花です。きっと、選ぶに至るまでのドラマがあったのでしょう。

 

◇背景と表現 

 深読みできそうなカットの多いこと……(誉め言葉)。印象に残っているのは、やっぱり、あさぎが9話ラストで向かう公園の遊具ですね。あちこちペンキが剥がれていて、錆が見受けられます。時々出ていた公園と比較しても劣化状況があからさますぎます。あさぎが瞳美に向かって思いを漏らしてしまったことを悔いている様子から、意味するところはペンキの剥がれた醜い自分といったところでしょうか。公園の遊具ということからして、子供っぽいとか、大人げない、と言ったキーワードも込められてそうです。

 それに、3話の瞳美が唯翔に礼を言って別れるシーン。間に挟まった水道の蛇口から雫が零れるカット。泣きそうなのをこらえて、無理や笑顔を作ったって暗喩でしょうか。蛇口のカットは他にもありますが、他のシーンは間というかテンポを取るために使われている気がするんですよね……。

 1話と13話の未来のシーンに描写される時計もにくい演出しています。1話が07:31→07:32、13話が07:44→07:45。琥珀登場から抱き合うまでその間13分。13話という意味合いか、それとも13の数字が瞳美(ひとみ)と掛かっていると考えるのも味わい深いですね。

 

◇6話後半について

 深読み深度高めでお送りします。6話の雨の中、瞳美と唯翔が出会って瞳美が色を一時的に取り戻すシーンについてです。物語全体に対する対比がなされています。要するにこのシーン、物語全体の縮図だと思うんですよ。

 

  琥珀の魔法によって傘を吹き飛ばされ、唯翔と対面した

 /琥珀の魔法によって過去に飛ばされ、唯翔と出会った

 暗闇の中へ雨も厭わず逃げる瞳美、それを見て傘を拾って追いかける唯翔

 /過去の出来事から自ら枷を嵌めていた瞳美、それを外す要因である絵を描こうと奮起する唯翔

 列車到着直前に、瞳美がきっかけとなって絵を描くことを決意する唯翔

 /琥珀の時間魔法が発動する間際に、唯翔がきっかけとなって色を取り戻す瞳美

 唯翔が濡れたまま帰路に就く瞳美に傘を差し出し、瞳美は手を伸ばし、二人の手と手が触れる

 /唯翔が未来に帰る瞳美に思いと言葉を手向け、瞳美も思い伝え、二人は抱き合う

 瞳美は路面電車に揺られ、一時的に色彩を取り戻し、窓の外を眺める

 /瞳美はカラビ=ヤウバスに揺られ、色彩を取り戻した目で窓の外を眺める

  

 傘が重要な仕事をしています。唯翔が瞳美を追いかけるシーンにワンカット主役で映り込むキーパーツ。 傘は雨から身を守る、転じて外部から心を守るものです。

 元々の瞳美は故意(本人からすると無意識)に他人と関わりすぎないように振るまっていたのだと思われます。そうして周囲と距離を置くことで、全部魔法が使える自分が悪い、という結論を頑なに守り続け、変化を拒んでいた。そうでなくては大好きだった母親の行動が正当化できないから。過去に飛ばされた瞳美は、そうやって未来で培った価値観や常識、他人と距離を置く術を失います。何も思い通りにならない世界の中で出会ったのが、失ったはずの色が見える絵を描く唯翔でした。

 彼女に渡された傘は、唯翔の思いであり言葉。未来でこの言葉を思い出すことが、彼女にとって新しい生き方の支えとなり心を守るのです。同じ傘でも印象が違うのが面白い。そうやって考えると、唯翔から受け取った傘を差さずに雨に打たれて帰宅するところなんか、この傘があれば雨に打たれても平気、と暗示しているみたいで後日談とリンクしてしまいたくなりますね。

 

〇考察という名の蛇足

 はぐらされて結局正体を明らかにされなかったあれこれ、多分答えはないものだとは思うんですけど、所感を残しておきます。基本、妄想垂れ流しです。

 

◇金色のサカナ

 二人を導く重要ポジションにして謎の存在。6話で触れられはしたものの、その動き回る存在については徹頭徹尾神秘のベールに包まれたままで、挙句の果てにラストのシーンで急浮上……! あと、喋る。そんな謎存在である金色のサカナを考察とは名ばかりの私見を綴ります。

 まずは特徴を

  1. 金色
  2. 幼い唯翔が描き賞を取った絵
  3. 目が動く
  4. 初登場は1話の唯翔の絵。しかし、3話の同じと思われる絵には不在
  5. 絵から飛び出す
  6. 4話ラストで液タブ内部で泳ぐ
  7. 5話にて瞳美の魔法に紛れ込む
  8. 液タブに侵入する
  9. 瞳美は見える
  10. 唯翔も見える
  11. 6話前半、唯翔の絵の中にて瞳美を誘導した
  12. 6話前半、唯翔の絵の中にて腐っていた(大きい方)
  13. 6話前半、唯翔の絵の中にて排水溝のような場所を泳ぎ、ラストで瞳美の前に死んだも同然のような姿で浮上する
  14. 6話後半、唯翔が決意を固めた時に生き返る
  15. 10話、13話、瞳美の心象に唯翔を導く
  16. 13話、喋る「渡れるよ」
  17. 13話、未来でも瞳美に見えている

 

 正体として関連しそうなのは2、3、11、12、13、14、15、16。

 あまりにも漠然としている存在ですので、もう、ざっくりと仮説を立てます。それは金色のサカナが未来の唯翔である、という説です。

 2は言わずもがな唯翔にとって思い出深い絵であることは確か。3については、目の動くタイミングに併せて唯翔の声が重なっています。11、15についてはそうすればうまく行くことを知っていたかのような動きです。12は過去唯翔の心の中に占めるウエイトを示しているものと思われます。13はかつて自分が陥っていた大スランプ、汚染もされるでしょう。14、唯翔が吹っ切れたのとリンクしていることから関連が見られます。16、10話で唯翔が幼い瞳美に向けて送った言葉、関連性があります。

 あと、気になるのは10話後半の瞳美が流した涙。幼い瞳美を唯翔が懸命にはげまそうと絵(モノクロ)を描いていたことが瞳美自身に響いたのかと思っていましたが、シーンの切り替わりが不自然です。唯翔は何も書いて見せようとしたのか……推測ですが、それは金色のサカナ。そしてその涙は未来にも同じやり取りをしたことから流れた涙ではないかと考えます。

 

未来唯翔の行動概要(妄想)をざっくりと

 大学に進み、絵本(七色のペンギン)を執筆。

 ~

 瞳美が生まれ、絵本が瞳美の手に渡る。

 瞳美母が家を出る。唯翔は阻止できなかった。

 ふさぎ込む瞳美へを訪問し、10話と似た会話をし、金色のサカナを描く(色が見えた)。

 唯翔は病気を患っており、死期が近いことを悟る。

 魔法使いに相談

 未来唯翔が瞳美の魔法を解除するために魔法にて瞳美の精神に自身の分身を潜ませ、いつかくるあの時の時間旅行に備える。

 魔法の副作用により、幼い瞳美の中の唯翔との記憶が消える。

 交流が途絶え、唯翔死亡。

 ~

 瞳美が時間両行によって過去に飛び、過去の世界で唯翔の絵を見る→トリガーになって金色のサカナをアバターとし、行動を開始する。

 途切れ途切れの記憶を頼りにして、二人を導く。

 瞳美の色を取り戻すことに成功し、その状態のまま未来に帰る。

 

 推測の域をまるで出ませんが、未来の彼ら(特に唯翔)が直接的に瞳美を助けようとし接触していなかったのが、どうしても引っ掛かるので……。指を加えて見ていた訳ではなく、助けようと誰もが足掻いた結果、瞳美を過去に送ることになった。そう考える方が自然に思えます。 

 

◇唯翔の絵の中にいた人影

 6話前半に出てきてこれっきり、後半の唯翔が決意を新たにした場面でも登場しない、謎の存在。

 特徴をまとめてみます。

  1. 全体像は黒のシルエット
  2. 背丈は高い(少なくとも小学生ではない)
  3. 頭頂部には唯翔と似たアホ毛がある
  4. 網を持って、金色のサカナを捕まえようと狙っている
  5. 現れる場所は唯翔の絵の中にある、色が排水溝のように抜け落ちていく場所
  6. 瞳美の証言を受けた唯翔の反応から、唯翔は人影が何者であるか知っている

 5からして、唯翔の絵に深く関わる人物であることは確かです。3からして唯翔本人、若しくは彼の父親。そこで重要になってきそうなのが4の行為。金色のサカナについては前項で考察しましたが、唯翔の絵の中の存在が狙っていることから、それとは別に唯翔にとっての金色のサカナは何なのかを考える必要が有りそうです。

 唯翔にとっての金色のサカナとは、絵を描きたいと思うきっかけになった重要な事項であり、それ自体を象徴するものです。いわば、インスピレーションの塊。それを捕まえようとしている人影=唯翔と関連づけるのは簡単ですが、それだと6話後半で黒のシルエットが吹き飛んだりするなどして登場しそうなものですが、登場しない。それに、人影の動きですが、どうも実際の唯翔の心情と合致してないように感じるんです。前者がゆっくり、余裕を持って捕まえようと狙っているのに対し、後者はあれでもないこうでもないと模索しながら迷走する焦りが感じられます。これらがどうも引っ掛かります。

 もう一段階踏み込みましょう。唯翔が絵を描きたいと思ったのは、山吹のセリフにある、父親に絵を褒められて嬉しかったことが根幹に因むものと考えられます。その体験の中で特に思い出深いものが賞を取るに至った「金色のサカナ」。つまり、唯翔にとっての"絵を描きたい"と思う衝動は“金色のサカナ”とそれを褒める"父親"の存在がセットになっていると言えなくも無いのです。

 ここで、人影が唯翔の父親であると仮定してみます。

 まず、気になるのは現実における父親の行方。葵家は母子家庭であると母親のセリフにありますが、この発言をする雰囲気を察すると家庭内での父親の不在は割り切れている様子です。離婚、死別、どちらが近しいかと問われれば後者の雰囲気。離婚していた場合なら、その父親に褒められたことが大きな要因となった絵を描き続けることに思春期なりに抵抗を感じていそうなものです。そう言った面で考えても、褒めてくれる存在がいなくなって、絵を描き続ける意義が行方不明になりかけていたと考えられる死別の方が状況に即していると考えられます。

 次に、人影が金色のサカナを捕まえようとしていた行為です。広義的に見て金色のサカナが意味しそうなものは、成功ないし一攫千金でしょう。当初、前項で金色のサカナ=唯翔と考えていたことから、絵描きとして成功しそうな唯翔を虎視眈々と狙う黒い人影=破局的離婚をした悪い父親とか考えていましたが、それが違うのは前述の理由の通りです。では、その行為は何なのか、そこで重要なのが6。唯翔はその”網を持って金色のサカナを捕まえようとする“人影が何者なのか気付いているのです。

 あの絵の世界は唯翔の心象を象徴する世界であり、そこに存在するものは彼の心情ないし思い出を反映した場所です。砂漠は潤いを失くした心、腐敗した巨大な金色のサカナは過去の戻れない思い出、色が濁り抜け落ちる場所は文字通り、唯翔の絵を描く幸せ(色彩)が濁り、失われている場所です。ならば、そこに居る人影がする行為は過去の思い出に因むものではないでしょうか。金色のサカナの絵を前に「まるで生きているようだ!」とか言って、網を構えて捕まえようとする父親。幼い唯翔には特別な思い出になっていても不思議ではありません。それが死別ともなれば尚更にです。

 さらに深読みすると、6話後半で人影が登場しなかった理由。これはそれまでの絵を描く原動力であった父親という存在が、瞳美に切り替わったことを暗に示しているとも考えられ、納得ができます。もしくは尺が無かったとか設定画のコスト。

 以上からして、人影=父親ではないかと私は考察します。……というか唯翔の過去だけでも話ができそうですね。視点が瞳美だから仕方ないから省かれているとはいえ、彼も十分主人公してますので、唯翔視点で語られる話があったらそれはそれで面白そうです。

 

まとめ

 さて、いかがでしたでしょうか? ちゃんと考察記事になっているかどうか懸念が残るところではありますが、最後までこの記事を読んでくだったことに感謝を。そしてこの記事が、あなたの明日をより色づけする一助になれたのであれば幸いです。